この記事を読むとわかること
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Q:NISAでは投資信託の分配金が非課税になるため、分配のある投資信託に投資すべき?
NISA制度では、投資信託から支払われる分配金の受取りに関しても非課税になるため、分配金が払われる投資信託を保有することにメリットがありそうです。分配金を払う投資信託を中心にポートフォリオを構築すべきでしょうか。
A:分配金は不要
2024年から始まるNISA制度では、毎月分配型の投資信託は投資対象として認められていませんが、これは言い換えれば、投資信託は隔月までの頻度で分配を行うことが認められているということです。
このルールを聞くと、あたかも毎月分配をしない商品ならば、NISA制度の目指す長期投資にも適していると誤解されがちですが、注意が必要です。NISA制度においては、分配はいかなる頻度であっても(年に1度の場合でも)デメリットとなります。
まずは、投資信託の分配に対する正しい理解が重要です。分配金と聞くと、投資信託のリターンの一部が投資家に還元されるように思えるかもしれませんが、実際はそうであるとは限りません。分配金は、投資信託のリターンとは直接的な関係がなく支払われます。投資信託の分配金支払い能力を示す「分配原資」という概念がありますが、これもリターンとは直接関連しません。
分配金は必ずしも利益の還元ではなく、「特殊な一部解約」という考え方が適しています。
かつて、投資信託の販売上位には毎月分配型の商品が多く並んでいましたが、これらの中は実際のリターンとは無関係に資産を取り崩しているだけにも関わらず「高い分配金が支払われる」と宣伝され、販売されてきたものも多くありました。「分配金利回り」という言葉も悪しき慣習の一つです。これは資産の取り崩しであるにもかかわらず、「利回り」という言葉を使用することで投資家が収益を上げているような誤解をさせてきたと言っても過言ではありません。
繰り返しですが、分配金は利益の還元ではなく、特殊な形態の解約です。長期投資の観点で考慮すべきは分配の頻度ではなく、分配の有無です。
NISAで分配を受け取るメリットは全くない
課税口座では、分配がないファンドよりも分配があるファンドにメリットがある場合があります。これは海外資産への投資を行う投資信託で、投資対象国と日本が租税条約を結んでいるケースが該当します。
投資信託が海外資産から配当を受け取る際、税金が発生することがあります。税引き後の配当は投資信託の純資産として計上されますが、日本の個人投資家がこの投資信託を売却すると、国内の譲渡課税が発生し、二重課税の問題が生じます。
2020年にこの問題を解決すべく制度が改められ、売却ではなく分配金という形で投資家に還元することで、この二重課税を解消する仕組みが整備されました。この結果、課税口座では分配がない投資信託よりも分配がある投資信託の方が、正味の収入が高くなる可能性があります。ただし、精緻な計算による分配が行われない場合、分配金に対して課税される可能性が残るため、その場合は分配を行わない方が良いこともあります。
一方、NISA口座では、このようなメリットは存在しません。NISA制度では、投資信託の値上がり益も分配金も国内で課税されないため、二重課税の心配が存在せず、分配の有無による影響がありません。
定期的な現金収入を作るには
投資信託から定期的な現金収入(キャッシュフロー)を得たい場合は、分配という形よりも、通常の一部売却(解約)によって資産を取り崩す方が合理的です。この理由は、「高配当銘柄への投資」に関する記事で紹介した内容と同様ですが、通常の一部解約にはNISAの生涯投資枠を少し回復させる利点があります。
(分配金の場合は、配当金の場合とは異なり、NISAの生涯投資枠を回復できるケースがありますが、それでも一部売却(解約)の方が合理的にNISA枠を回復させられます。)
自身で定期的に一部解約を行うことは手間がかかるかもしれませんが、金融機関によっては定期的に売却するプログラムが用意されていることもあります。そのような機能を活用すれば、手間なく効率的にキャッシュフローを作り出すことが可能です。
- 投資信託の分配金について、正しく説明しているのは次のうちどれでしょう?
- 正解は・・・
B投資信託の分配金は、投資信託内の利益とは直接関係なく支払われるものであり、実質的には特殊な一部解約といえる。
投資信託の分配金は必ずしも投資信託内に生じている利益とは関係がなく、投資元本の切り崩しが行われている可能性があります。