この記事を読むとわかること
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相場に対する見通しとは
投資や資産運用を行う上で、相場に対する見通しを明確にしておくことは大切です。見通しを持たずに投資をすること自体は問題ありませんが、見通しを持ちながらそれを反映させたポートフォリオ(ポジション)を構築していない、あるいは自分が明確な見通しを持っていないとの認識がない場合、後悔につながる誤った投資行動に出てしまうことがあります。特に後者は後知恵バイアスとして知られ、注意が必要です。
繰り返しになりますが、見通しを持っていなくても良いのです。ただし、自分が見通しを持っていないことを自覚しておくことは重要です。
具体的な見通し
見通しとは、例えば以下のような予測を指します。
多くの人がこれらのような見通し、あるいは見通しとまで言えずとも似たような意見を持っているのではないでしょうか。
投資において重要なのは、これらの見通しが市場参加者の平均的な見解(コンセンサスと言います)からどれほど乖離しているかです。多くの投資家は、何らかの見通しに基づいて取引を行います。そのため、市場価格には市場参加者の見通しが反映されており、専門用語で「(価格にはコンセンサスが)織り込まれている」と表現されます。
分かりやすい例で言うと、将来日本よりも米国の方が経済的に成長するという見通しは、多くの投資家に受け入れられやすく、すでに日米の株価にその見通しが織り込まれていると考えられます。もしあなたが、米国よりも日本の方が成長していくと考えるならば、それはコンセンサスと乖離した、価値のある見通しです。あなたの見通しが正しければ、市場に参加する大変の投資家よりも高いリターンを得るチャンスがあるでしょう。
見通しがなければ、コンセンサスに乗ってみよう
見通しの価値について言及したものの、見通しがない場合や、世の中の投資家のコンセンサスとは異なるような独自の見通しを持てない場合でも、悲観する必要はありません。そのような時は、世の中の投資家の平均的な見通し、すなわちコンセンサスに逆らうことなく従うのが良いでしょう。
少し話がそれるように感じられるかもしれませんが、投資からリターンを得る本質について考えてみましょう。
何かに投資する際、例えば株を買う場合、必ずそこには売り手が存在します。そしてその株に対して売り手はより高く売ろうとしているのに対し、自分はより安く買おうとしています。この図式では、取引価格が不当に高い、または低いことは、どちらかの計算が間違っていることになります。
一方で、世界の投資家がみな合理的であれば、市場価格は常に正しい、適切な状態であると言えます。これは、売り手も買い手もフェアな価格で取引しているということです。実際には、資本市場の参加者が常に合理的であるわけではなく、価格が常にフェアであるとは限りませんが、多くの投資家は自分なりの仮説やリサーチに基づいて取引しているため、その瞬間手に入れられるような情報においては、限りなく合理的な価格が形成されていると考えられます。
自分に見通しがなければ、コンセンサスに従うことで、後悔する可能性は低くなるでしょう。多くの投資家が競い合ってリサーチを行い形成されたコンセンサスに対して、NOと言い切れる局面は多くないものです。
コンセンサスに乗る投資の代表格が、巷で有名になりつつある「インデックス投資」を呼ばれる投資方法です。インデックス投資は、特定の銘柄を個別に選択する投資とは異なり、市場全体をまとめてその時価総額比率で買い付ける方法で、専門的にはパッシブ投資と言われます。
見通しを持たないことの認識
投資において厄介なのは、明確な見通しを持っていなかったにも関わらず、事後に自分が見通しを持っていたかのように感じることです。これは「後知恵バイアス」と呼ばれる認知バイアスで、実際の出来事が起こった後に、まるで自分はそれを予知していたかのように感じるものです。特に大きな損失や機会損失が発生した時に感じやすく、その後の投資行動に悪影響を及ぼすことがあります。
- 例えば、株価が下落した時に「下落すると思っていた」と感じ、下落後に売却すること。
- 持っていない銘柄が上昇した時に「上昇すると思っていたのに」と感じ、上昇後に購入すること。
このような拙速な投資行動は、価格が反転した時にマイナスになる可能性が高く、また、自分の架空の見通しに惑わされて一貫性のない後追いの投資行動を招く原因となります。
大切なのは、自分が見通しを持っていないことを自覚すること、そして予期しなかった事象に対して焦らないことです。見通しがないこと自体は決して悪いことではありません。見通しがない時はそれを自覚し、市場のコンセンサスに従い、将来後悔をしないようにすることが重要です。
- 次のうち、後知恵バイアスに分類されるものはどれでしょう?
- 正解は・・・
B世界ランク10位の選手がオリンピックで金メダルを取った時、競技が始まるまでは無関心だった観客が、メダル確定後に「絶対取れると思っていた」と感じる。
一般的に、Aは確証バイアス(自分が欲する情報に目が行ってしまい、客観性を失う心理的な現象)、Cは可用性ヒューリスティック(すぐに思いつく特定の事例に基づき全体を判断してしまう現象)とされます。これらのバイアスも、後知恵バイアス同様に適切な投資行動の妨げになります。