この記事を読むとわかること
目次
投資は「安く買って高く売る」?
投資からリターンを得ることの本質について議論する際、ときどき「(突き詰めて言えば)安く買って高く売ること」という表現を見聞きします。確かに、これは投資から収益を得る意味では間違ってはいませんが、この考え方は投資の本質を矮小化しているため、注意が必要です。
「安く買って高く売る」というのは、売買取引が目指す形に過ぎません。なぜ投資からリターンが得られるのか(なぜ安く買えて高く売れるのか)については説明していません。
投資の結果は常に不確実で、絶対に成功する投資は存在しません。このことは言い換えれば、確実に安く買えるタイミングも、あるいは確実に高く売れるタイミングもないと言えます。
もう一つの誤解を招きがちな表現は、ローリスク/ローリターン、ハイリスク/ハイリターンという言葉に代表されるような「リスクを取った分だけリターンが得られる」といった表現です。残念ながらより高いリスクを取ったからといってより高いリターンが得られるわけではありません。そもそもリターンを得られないリスクも山ほどあります。
正しくは、リターンを得るにはリスクを取る必要があるが、リスクを取るだけではリターンを得るのに十分ではない、ということです。
リターンを得ることの本質を理解していなければ、正しい投資をしていても、わずかな損失が出た時に投資をやめてしまったり、リターンが期待できない投機的な行動を繰り返したりする可能性があります。
投資を始める前に、一度「なぜ投資によってリターンが期待できるのか」を考えておきましょう。
投資は、資金を必要とする人と資金を供給する人をつなぐことで社会に貢献し、リターンを得る
投資を深く考えれば、最終的には「資金を必要とする人」と「資金を供給する人」の関係性に行き着きます。このどちらかが欠けてしまうと、そもそも投資という概念自体が成立しません。
抽象的な話は分かりづらいので、具体的な例、例えばパン職人のケースを考えてみます。
とてもおいしいパンを作る技術を持った職人がいて、パン屋を開きたいと考えているとします。しかしパン屋を開業するための資金を十分に持ち合わせていません。誰かがこの職人にお金を貸すなり、出資するなりしなければ、前に進めません。
そこで投資家の出番です。投資家は、この職人の新しいパン屋がうまくいかなかったときにお金が返ってこないリスクを負って、資金を提供します。
どんなにおいしいパンが作れたとしても100%うまくいくビジネスなんて存在しませんから、投資家は相応の条件(たとえば資金の返済金利であったり、将来の利益の配分率)を設定してリスクを負うことを考えます。
職人が見事、とてもおいしいパンを作り、客も多く付いたときには、投資家は相応の条件のリターンを得ることができます。そして職人もパンの売上という収益を手にすることができ、さらに世の人々もおいしいパンを食べることができ、と関係者全員が利益を得ることができます。
現実世界はこんな単純な話ばかりではありませんが、投資のエッセンスはこのパン屋の例に凝縮されます。
① まず資金を提供する側は、パン屋が成功しないリスクを認識しつつ、それでも投資に値するメリットを感じられること。
② 続いて資金を必要とする側は、適切な条件に応じて資金の供給を受けること(投資家だけにメリットが残るような契約は結ぶ意味がない)。
③ そして何よりも、この両者がつながったあとに生み出される価値が、社会に求められること。
「資金を必要とする人」と「資金を供給する人」の関係が適切である場合、その投資はリターンを生み出すことが期待できます。関係が適切であるということは、投資対象が適切に評価されている状況を意味しており、資金を必要とする側と資金を供給する側、双方にとって公平な状態を意味します。(適切な評価がなされていれも、投資が失敗する可能性が常にあるということを忘れてはいけません。)
リターンが期待できる投資行動
長期的に投資からリターンが得るためには、社会に求められていて、かつ適切に評価された(または過小評価されている)投資対象への投資を忍耐強く継続することが必要です。
(難しいと感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、このまま本WEBサイトを読み進めていただければ、さほど特別なことではないこともご理解いただけるかと思います。)
繰り返しになりますが、投資は常に不確実です。しかし、リターンが期待できる投資行動を愚直に繰り返していけば、やがて損失の可能性は減少していき、多くのケースでリターンを得ることが出来るはずです。
この本質を理解しないままに投資対象を売買することは危険を伴います。
投資対象の適切な価値(本質的な価値)を見出さず、物を安く買って高く売るという目的だけで取引を実行することを投機と表現することがありますが、投機的な取引は一時的に(たまたま)リターンを得ることができても、長期的にリターンを上げ続けることは大変困難です。反対に、リターンの期待できる正しい投資行動をとっていたとしても、すぐに結果が出るわけではないことを理解することも重要です。
なぜ投資によってリターンが得られるのかを深く理解し、継続的に適切な投資を行っていくことが肝心と言えます。
- リスクとリターンの説明のうち、正しいものは次のどれでしょう?
- 正解は・・・
B(銀行預金以上の)リターンを得るためには、リスクを取らなければならない。
リターンを得るにはリスクを取る必要がありますが、リスクを取ったと言ってリターンが得られるわけではありません。ましてや高いリスクを取ったから高いリターンが得られるわけでもありません。