この記事を読むとわかること
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投資の結果は必ず不確実
不確実性は甘く見られがちです。
最近は多くのサイトで株式投資、特にインデックス投資の有用性について話題になっています。これにより投資に魅力を感じる人が増えるのは良いことですが、投資が確実に利益をもたらすかのような誤解を招く論調には懸念があります。
投資の大原則として、その結果は必ず不確実であることを理解する必要があります。確実な結果が期待できるものは、そもそも投資ではありません。
例えば、さまざまな解説本やサイト等で「平均5%の資産成長」といったグラフが提示されることもありますが、残念ながら現実にはそのように滑らかに資産が成長していくことは期待できません。長く投資をしていれば必ず大きな値下がりが発生したり、逆にもっと大きなリターンが出たりします。
さらに言えば、仮に年5%のリターンが期待できたとしても、10年後に資産がマイナスになる可能性も十分にあります。矛盾を感じるかもしれませんが、この点については、後半で具体例を示して説明したいと思います。
リスクとは
投資や資産運用の世界では、リスクという言葉は多くの場合、不確実性の大きさを表します。この不確実性の度合いは、変動リスク(専門用語ではボラティリティ)として数値で示されることもあります。例えば、変動リスクが15%であると言った場合、これは年率で見たときに期待できるリターンの変動幅が、標準偏差で見て15%あるという意味です。「損失の可能性が15%ある」ということではありません。
もしリターンが正規分布に従うと仮定すると(もちろん現実はもっと複雑ですが)、平均的に期待できるリターンに対して±15%の範囲に収まる確率は約68%と言えます。たとえば、次の図に示すのは、「期待リターン年率5%、リスク年率15%」の持つ投資の単年のリターンの分布です。分布が正規分布に従うならば、単年のリターンは-10%から+20%に約68%の確率で収まると言えます。
期待リターンとは
期待リターンとは、文字通り平均的に期待できるリターンの大きさのことを言います。期待リターンの算出は実際には非常に難しく、さまざまな議論を巻き起こしますが、一般的に世界の株式市場の期待リターンは年率4-8%程度とされています。
「期待リターンが5%である」と聞くと、長期的に、または最終的に年率5%の資産成長をすると想像しがちですが、実際にはそうではありません。
サイコロで例えるなら、この期待リターンは、出目の期待値である3.5と同様の概念です。サイコロには1から6までの数字があり、1回振った際の出目の期待値は3.5です。
サイコロを5回振ると、出目の合計は17~18程度になることが期待できますが、実際の結果は大きくばらつくことが容易に想像できます。本当に運がよければ、5回サイコロを振って全て6が出て合計30という結果を得られるでしょうし、反対に全て1が出て合計5という結果も得られるでしょう(どちらも発生確率としては1/7776です)。5回のサイコロの出目の総和は、14から21となる確率が概ね70%となります。
サイコロのグラフと投資のリターンのグラフ、良く似ていませんか?
期待リターンが5%と計算されたとしても、実際の結果はサイコロのようにばらつきます。このばらつきの大きさこそがリスクと表現される部分であり、年率の変動リスクが高ければ、20年や30年にわたる投資であっても最終的にマイナスになる可能性も十分にあるのです。
具体的に不確実性を考えよう
統計や数式は分かりにくいかもしれませんので、具体的なシミュレーションをして、投資の将来の結果がどのくらいばらつくのかを見てみましょう。
年率5%の同じ期待リターンを持つ投資AとBがあるとします。Aのリスクは15%、Bのリスクは30%とし、10年後の結果をシミュレーションしてみます。すると、結果のばらつきは次のようになります。
期待リターンが同じなため、どちらも10年後の「平均値」は同じですが、リスクが大きいほど結果に開きが出ることがわかります。リスクが30%の投資では、10年後にマイナスである確率が48%も存在します。
サイコロの例で示したような、ヒストグラムでも確認してみましょう。
「期待リターンが年率5%」と聞いて想像した世界より、結果がばらついている印象を持ちませんか?
投資に対する期待リターンとリスクに関しては、次のことが言えます。
① 期待リターンが5%というのは、あくまで単年の「平均」の話である。平均は、一部の突出して良い結果を出す可能性も含んでおり、投資リターンの分布の中央値は平均より必ず小さくなる。
② リスクが大きくなればなるほど、良い時と悪い時の差が大きい。
③ リスクが大きくなればなるほど、分布は下方に集中していき、リスクの大きさによっては長期投資であってもマイナスになる可能性がそれなりにある。
以下に、代表的な資産の持つ年率の変動リスクを紹介します。
リスクを過度に恐れる必要はありませんが、決して軽視してはいけません。
平均的に期待できるリターンがプラスであっても、リスクが大きすぎれば、10年後もそれなりの確率でマイナスになるということを事前に理解していることが大切です。
自分の投資ポートフォリオを設計する際には、そのポートフォリオが持つリスクをよく考えましょう。
- 年率リスクが15%と言われたら、それは何を意味するでしょうか?
- 正解は・・・
A想定される年率リターンが、標準偏差で15%程度のばらつきを持っている。
投資の世界では、リスクは(特にことわりがなければ)リターンのばらつきを表します。