この記事を読むとわかること
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Q:リバランスはいつ、どのように実施すべき?
特定の見通しに基づいて、複数の銘柄を組み合わせて投資ポートフォリオを構築したとしましょう。投資を始めてからしばらく経過すると、各銘柄の価格変動により、投資比率に変化が現れます。当初のポートフォリオ設計からどの程度乖離したら、リバランス(評価額が上昇した証券を一部売却し、評価額が低下した銘柄に資金を振り向けて、元の設計比率に近づける行為)を行うべきでしょうか。
A:多くの場合ではリバランス不要だが、数年に1度の投資環境では別
リバランスは、自身の投資見通しと実際の投資状況を一致させるために重要です。しかし、NISAを利用している場合、自身の見通しが変わっていない限り、リバランスを頻繁に行う必要はそれほどありません。
プロの投資信託の運用では、リバランスは取引コストという制約のもとで厳密に計算され、管理されています。リバランスのメリットとデメリットを比較し、メリットの方が大きいと判断された場合のみリバランスが行われます。
しかし、NISA制度を利用する場合、リバランスには取引コスト以外のデメリットも存在します。NISAには年間の投資枠に上限があり、一度売却するとその枠は翌年まで回復しません。このため、多くの場合、リバランスによるメリットよりもデメリットの方が大きくなる可能性があります。
さらに、NISAでは枠の利用が簿価残高方式で管理されているため、値上がりした証券を売却しても、回復する枠は簿価ベースでしかない点も考慮が必要です。リバランスにより売却する銘柄は通常、相対的に評価額が他の銘柄よりも高まっているため、この点が特に問題となります。
したがって、NISAを利用している場合、リバランスは慎重に行う必要があり、自身の見通しやNISAのルールを考慮した上で、そのタイミングと範囲を決定することが重要です。
例えば、100万円で購入した銘柄が120万円に値上がりした場合を考えます。この銘柄を20万円分売却しても、翌年以降に回復するNISAの枠は約17万円に限られます(20万円が完全に回復するわけではありません)。この売却により得られた資金で別の銘柄に20万円投資すると、追加投資を行っていないにも関わらず、実質的にNISAの利用額は100万円から103万円(100 - 17 + 20 = 103)に増加します。言い換えれば、将来利用できるNISA枠が3万円失われることになります。このような取引を口座全体で行うと、思わぬ枠の消費につながることがあります。
リバランスによる効果がデメリットを上回る局面もありますが、その判断は容易ではありません。市場に対する見通しに変化がない場合、数年に一度のような大きな市場変動がない限り、リバランスを行わなくても問題は少ないでしょう。大きな市場変動があった場合(株式であれば例えば1年に40%以上の値動きがあった場合など)にリバランスを検討するのが適切です。
積立投資や追加投資を行う際には、新規に購入するタイミングで評価額が低い銘柄に投資することで、目標の投資比率に近づけると良いでしょう。定期的な新規投資を通じて目標比率に近づけることで、不必要なリバランスの実施を極力減らすことができます。
グローバル分散投資を実施している場合は特に不要
リバランスの必要性は、ポートフォリオの構築方法にも依存します。例えば、近年個人投資家の間で主流になりつつあるインデックス投資のような、市場の見通しを持たない投資スタイルでは、リバランスは必ずしも必要ではありません。特に市場が急変する時期でも、リバランスを行う必要はないと言えます。
市場の見通しを持たないということは、事実上、市場の動向に身を任せていることと同じです。これは決して悪いことではなく、世界の投資家のコンセンサスに沿った投資行動を取ることを意味します。保有する銘柄の価格が変動しようと、市場が急変しようと、価格は常にその時点での市場のコンセンサスを反映しています。したがって、どのような市場環境にあっても、リバランス(自身の設定した目標と実際の投資状況を合致させる行為)は必要ありません。
この観点からすると、インデックス投資などの市場の動向に委ねる投資スタイルを採用している場合、リバランスを頻繁に行う必要はなく、投資家にとって労力のかかりにくいアプローチと言えます。
- NISA口座におけるリバランス時に、デメリットとして考慮すべき点として誤っているものは、次のうちどれでしょう?
- 正解は・・・
C積立投資の頻度
積立投資の頻度とリバランスには直接的な関係はなく、デメリットになることはありません。