この記事を読むとわかること
目次
Q:NISAの投資枠に余裕がありながら、課税口座で投資しているときは、どうするのが良いか
現在、NISAの年間投資枠に余裕がありながらも、課税口座で投資をしていると仮定しましょう。この状況で、課税口座の投資を売却してNISA口座で再投資する(課税口座からNISA口座に投資を移す)かどうかを考えます。
最初に考慮すべきは、課税口座での投資を売却する際の税金の問題です。課税口座の投資が含み益の状態であれば、売却時に約20%の税金が発生します。一方、含み損の場合は税金は発生しませんが、将来の税のメリットを失うことになります。含み損がある状態では、その損失を取り戻すまで税金がかからないためです。
このように、課税口座の投資をNISA口座に移すかどうかを判断する際には、これらの税金の影響を慎重に考慮することが重要です。
A:基本的には、NISAの投資枠がある状況なら、できる範囲で移してしまうことが望ましい
合理的な行動としては、NISAの年間投資枠に余裕がある場合、その余裕がある範囲内ですぐに投資を移すことが望ましいです。ただし、「NISAの投資枠に余裕がある」という条件には、同じ年度内に予定している、積立による買付を含めた、今後の追加投資による枠の消費も含まれます。
例えば、現在NISAの年間投資枠に100万円の余裕があるとしましょう。この場合、NISA枠に対する積立投資の設定や同年内の追加投資予定も、年間投資枠の計算に考慮する必要があります。
たとえば、同年内にさらに30万円を投資する予定がある場合、表面上はNISAの年間枠に100万円の空きがあるように見えますが、実際の利用可能枠は70万円と考えるべきです。これにより、課税口座からNISA口座への投資移動を計画する際の判断基準が明確になります。
課税口座が含み益の場合:
課税口座に含み益がある場合、その資産を売却すると税金が発生します。これにより資産が一時的に減少するように感じるかもしれませんが、将来いずれ売却するときにも結局税金分の資産減少は避けられないため、過度に心配する必要はありません。むしろ、課税口座での投資を継続すると、将来の税コストは増加する可能性が高いです。
一方で、「NISA口座で買いなおした保有資産が将来値下がりしたら、今売却することによる税金の分だけ損ではないか」と考える方もいるかもしれません。確かに、課税口座に置いたまま将来価格が下落すれば税金コストは減少するかもしれません。しかし、その保有資産について将来価格が下落する可能性が高い場合には、NISAに移すかどうかに関わらず、その時点で資産を売却し、別の種類の資産にシフトすることを検討すべきです。
投資とは、近い将来の結果が不確実であっても、長期的には何らかのリターンが得られると期待できることを前提に行われます。自分の今後の行動を合理的に考える場合、平均的に期待できる将来を想定するか、自身の見通しに基づいて行動を検討することが重要です。
合理的に行動することで損をしないとは限りませんが、合理的に行動することが損失の可能性を最も減らすことにつながります。
課税口座が含み損の場合:
課税口座に含み損がある場合、損益がトントンに回復するまで税金が発生しないため、NISAにすぐ移さなくてもよいと考えるかもしれません。しかし、実際には、すぐにNISA口座に移動させる方が合理的です。将来的にNISA口座に移すことを考えているのであれば、早めに移すほうがメリットが大きくなります。
具体例を挙げて考えてみましょう。課税口座で簿価100万円、時価60万円の資産があるとします。
これらの選択を想定した場合、AもBも将来の税金コスト自体は変わりません。しかし、NISAの枠の利用状況は異なります。選択肢AのNISA利用残高は60万円、選択肢BではNISA利用残高は100万円となり、Aの方が、NISAの利用残高を40万円少なく抑えることで、将来NISA口座で投資できる金額をBよりも40万円多く確保することができます。
税金コストは同じでも、NISAの枠をより小さく利用する選択肢Aの方が魅力的といえます。NISAの枠を節約しておくことで、将来の追加投資や他のセクションで紹介したNISA枠の最適利用が行いやすくなります。単に税金コストだけを考えるのではなく、NISA枠の利用を効率的に管理することも重要です。