この記事を読むとわかること
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Q:機動的にポートフォリオを変更するような投資をしたい
投資家の中には、株式の個別銘柄の価格が上昇したタイミングで売却し、次の銘柄へ資金を移すスタイルを好む投資家もいます。ここでは、このスタイルを「波乗り投資」と呼ぶことにしましょう。NISA口座ではどのように波乗り投資を実践すべきでしょうか。
A:機動的な投資行動は、NISAと相性が悪いため不適
結論としては、残念ながらNISA口座では波乗り投資は行わない方が良いでしょう。NISA制度の利用の巧拙は、含み益の大きさによって測られると『制度を使い倒そう』の記事で紹介しました。含み益を継続的に大きく成長させていくことが、NISA制度を最大限に利用する肝と言えます。しかし、波乗り投資では含み益を実現益として繰り返し認識するため、含み益が持続的に大きくなることはありません。
波乗り投資で資産を増やすことも可能と考えられますが、数年後には実現益がNISAの生涯枠を圧迫し(非課税枠での追加投資が限定される)、長期保有を目的とした投資スタイルと比較してNISA制度のメリットをやがて活かせなくなっていく可能性があります。
米カルフォルニア大学の研究(※)によると、取引頻度が少ないほど投資結果が良いことが知られています。また米国の証券会社が顧客口座を調査したところ、最も成果を上げている顧客は「投資したことを忘れている投資家」であったという逸話も耳にするところです。
波乗り投資は、うまくいけば大きく資産を増やす可能性がありますが、多くの人には成功しにくいスタイルといえ、またNISA制度との相性も良くありません。そのため、波乗り投資を行う場合は、資産の一部に限定した上で、NISA口座に対する将来の投資可能額を圧迫しない程度に実施することが望ましいでしょう(もし将来的にはNISA口座の生涯投資枠の限度いっぱいまで投資する予定であれば、NISA口座内で波乗り投資をすることは避けた方が無難です)。
※ Odean, T., & Barber, B. M. (2000). Trading is hazardous to your wealth: The common stock investment performance of individual investors. The Journal of Finance, 55(2), 773-806.
機動的なポートフォリオ変更をしてくれる投資信託を探そう
もしNISA口座内で波乗り投資のような機動的なポートフォリオ変更を望む場合は、まずはそのような投資スタイルを持つ投資信託を検討すると良いでしょう。
様々な研究により、無節操な波乗り投資は投資家に与えるマイナスの影響が大きいことが示唆されていますが、別の研究ではあらかじめ定めたルールなどに基づいて銘柄入替えを行うことで、市場平均のポートフォリオ(インデックス投資)よりも投資効率を高めることが可能なケースもあると言われています。投資信託の中には、そのように理論的に頻度高くポートフォリオを変更するような商品(たとえば「バリュー投資」や「モメンタム投資」などの種類があります)も開発されており、利用を検討してみてもいいでしょう。
NISA口座内で行う波乗り投資はNISAの投資枠を必要以上に消費してしまい、非課税メリットを最大限に活用できなくなる恐れがありますが、保有する投資信託内で行われる銘柄の売買や機動的なポートフォリオ変更は、個人のNISA枠には影響しません。この利点を活かして、自身の投資方針に合った機動的な銘柄入替を実施する投資信託を探してみることをお勧めします。
- (この記事で紹介された)米カリフォルニア大学の個人投資家に関する研究によって報告された内容は、次のうちどれでしょう?
- 正解は・・・
B取引回数が少なければ少ないほど、投資結果は良好だった。
当該研究に限らず、他の様々な研究においても同様な結果が報告されており、頻繁な売買が取引コスト以上に投資家の投資効率を悪化させることが示唆されています。